- 史上2番目の巨大ダイヤモンド原石が約100年ぶりに発見される
- 世界最大のダイヤモンド原石は1905年に発見された「カリナン」
- 「レソトプロミス」はレソト王国で発見・史上15番目の大きさ
- 「レソトプロミス」に新たな生命を吹き込んだのはグラフ
- 最後に
史上2番目の巨大ダイヤモンド原石が約100年ぶりに発見される
ダイヤモンド・・・。
地球上には二千種類以上の鉱物がありますが、ジュエリーの王者といえばやはりダイヤモンド。
磨けば形容しがたい輝きを発し、「清純無垢」とういう言葉が冠せられて、昔から人の心を魅了してやみません。
2015年11月、業界を賑わせたビッグニュースをご存知でしたか?
ダイヤモンド史上過去2番目に大きいとされるダイヤモンド原石が約100年ぶりに発見されたのです。
これはカナダの探鉱会社ルカラが、1111カラットのダイヤモンドの原石を、アフリカ南部ボツワナの鉱山で見つけたと発表したものです。
その大きさは縦65ミリ、横56ミリ、高さ40ミリほどで原石が大きすぎて最大の研磨済みダイヤモンドの切り出し方を算出するスキャナーに入らない。
発見されたばかりで、現時点で品質が不明のため値段は未定で、同社は「どうすればこの原石から最大の価値を引き出せるかを見極めなければならない」と述べているものの既に引き合いが殺到している
これほど大きいダイヤモンド原石の発見は、1905年南アフリカで見つかった原石で、一番大きい「カリナン」の3106カラットにつぐ発見ということになります。
世界最大のダイヤモンド原石は1905年に発見された「カリナン」
その世界最大の3106カラットのダイヤモンド原石「カリナン」。
レプリカでその原石の大きさを見ると驚愕します。
ダイヤモンド原石3119カラットのカリナンのガラス製レプリカ
「カリナン」はイギリス王室に贈呈され、王笏・王冠のために9つの大きな石(カリナンI~カリナンIX)と96個の小さな石に切り出されたのは有名な話です。
その中でも最も大きいダイヤ「カリナンI」は、「The Great Star of Africa」と名づけられ王笏に、 「カリナンII」はイギリス王冠に飾られました。
現在はイギリスのクラウン・ジュエルとしてロンドン塔に展示されています。
この「カリナン」については、すでに多くのサイトで紹介されているので、ここでは省略させていただくとして、私は今回、同じダイヤモンドの原石で「レソトプロミス」と名付けられた、ダイヤモンド原石を取り上げたいと思います。
とくに深い理由はありませんが、下の一枚の画像に目が釘付けになったからです。
鉱山から掘り出された、1つのこの巨大ダイヤモンド原石がどのように、その後生まれ変わったのかを知りたくなりました。
「レソトプロミス」はレソト王国で発見・史上15番目の大きさ
このダイヤモンド原石は、2006年に四方を南アフリカ共和国に囲まれたレソト王国の、レツェング ダイアモンド鉱山で発見されました。
「レソトプロミス」と呼ばれる、大きさが603カラットもあるダイヤモンド原石です。
世界で最も高い標高位置にあるダイヤモンド鉱山のレツェングからは、これまでに産出されたダイヤモンド原石のトップ20のうちの、5個が出ているという、今注目の高品質ダイヤモンドが産出されている鉱山です。
「レソトプロミス」は、レソト王国で発見された中では最大級で、また現在までに発見されたダイヤモンド原石の中で、史上15番目の大きさと考えられています。
国の名前にちなんで「レソトプロミス」と名付けられました。
603カラットのこのダイヤモンド原石「レソトプロミス」は、その後アントワープにて、約14億7700万円で落札され、ゴージャスの極みのような女性の胸元を飾る、崇高なまでのジュエリーに生まれ変わりました。
「レソトプロミス」を落札したのは、イギリスのGRAFF(グラフ)というハイジュエリーブランドです。
「より大きく格別なダイヤモンドを世の中に送り出したい、ダイヤモンドを原石からクリエイトしたい」
というダイヤモンド会社でもある、ハイジュエラーのグラフですが、ダイヤモンド原石を、鉱山から女性の胸元を飾るジェリーになるまで、一貫して自社で行うことで定評があり、同社のダイヤモンドの生産量は世界最大規模となっています。
これまで世界の5大ハイジュエラーは、ハリー・ウィンストン、ティファニー、ブルガリ、カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペルの5つとされていて、中でもキング・オブ・ダイヤモンドと称されるのは、ハリー・ウィンストンでした。
ですが「21世紀のキング・オブ・ダイヤモンド」と言われているのはこのグラフなのです。
大粒かつ、極上のダイヤモンドを取り扱うジュエラーとして、国内ではグラフはまだハリー・ウィンストンほどの知名度はないかもしれません。
1960年創業のため、他の老舗ジュエリーブランドと比べると比較的新しいブランドでもあるということもあります。
日本で2007年に「ザ・ペニンシュラ東京」に、アジア初となるサロンがオープンして以来、各主要都市に出店しています。
その21世紀の「キング・オブ・ダイヤモンド」と称されるのは、創業者であり、CEOのローレンス・グラフ氏。
この方は一代で、21世紀を代表するトップダイヤモンド・ジュエラーへと成長を遂げるという、まるでおとぎ話のような経歴の持ち主です。
15歳でロンドンのダイヤモンド街で、ジュエリー工房見習いと して働きはじめ、職人としてダイヤモンドを見極める天賦の才能と経営ビジネスの手腕で頭角を現し、18歳で独立、自らの会社を設立しました。
のちに王族や世界中の富豪、中東の石油王など、一 流の顧客の信頼を得るようになり、21世紀を代表するダイヤモンドのトップジュエリーブランドへ大躍進しました。
「グラフに行けば、究極の極上ダイヤモンドがある」という噂が、世界中の富豪やセレブの間に広まり、瞬く間にトップジュエラーの仲間入りを果たし、大成功を収めました。
大きなダイヤモンドは、世界各地で掘り尽くされてしまったと言われている中で、同社は現在でも毎年100カラットを超える、しかも稀少で最高品質のDカラー、フローレスというダイヤモンドを発表し続けています。
ダイヤモンドの中には稀に、訓練をつんだグレーダーが調整された条件の下で10倍に拡大して見てもブレミッシュやインクルージョンがまったくないものがあります。
このような石はフローレスと呼ばれ、高く評価されます。
ダイヤモンドをはじめとする天然の宝石は、地球の地中深くで結晶となって堀りだされます。
自然の悠久の流れの中でその結晶が育くまれる中、ほとんどの結晶は別の鉱物を取り込んだりクラックが発生するのですが、ごく稀に内包物を全く含まずに成長する結晶も存在します。
このような自然界の偶然の奇跡から 生まれるダイヤモンド原石ですが、採掘から得られる量はごく僅かと言われています。
1カラットの原石ダイヤモンドを得るために、何トンもの岩石や砂利、砂を取り除いて、処理しなければなりません。
プレミア鉱山の処理工場では、鉱石1トン当たり平均して約3.5カラット(約100分の2.5オンス)のダイヤモンドを回収しています。アフリカの海辺の鉱床の産出量は、砂1トン当たりわずか約0.098カラット(10,000分の7オンス未満!)です。
出典:ダイヤモンドの探求
このことからもわかるように、大粒のダイヤモンド原石が、どれだけ稀少で、価値が計り知れないほどの奇跡のような宝石であるかということを思い知らされます。
そしてこのダイヤモンド原石、「レソトプロミス」は、グラフと出会うことで、新たな命を吹き込まれます。
「レソトプロミス」に新たな生命を吹き込んだのはグラフ
Graff氏のカッターは、Lesotho Promise(レソト・プロミス)に1年間取り組みました。
Graff氏が作成したビデオによると、Dカラーの可能性のあるダイヤモンドは、黒斑点の内包物を含み、そのカッティングは戦闘地図上で計画を立てるようだったと伝えています。
26個のGIA等級Dカラーのフローレスダイヤモンドは切り出されました。最大はのペアシェイプから最少の0.55カラットのラウンドブリリアントカットです。
Graff氏は、それぞれに原産地の証としてシリアル番号を刻みました。 全26個のダイヤモンドで総重量223カラットのネックレスをデザインしました。
とろけそうです・・・。
幾通りもの案が、時間をかけて検討に検討を重ねられましたが、最終的に、この1つのダイヤモンド原石からは、このような最大76.41カラットのペアシェイプ、最小は0.55カラットのラウンドブリリアントカットまで、同社独自の最新技術で、26個の計223カラットの、最高品質であるDカラーフローレスダイヤモンドに分割、カッティングされました。
余談ですが、現代のようなカッティング技術がまだなかった「カリナン」の時代、原石を分割する際に、技師が極度の緊張のあまり気絶したという話を聞いたことがあります。
この贅沢な高貴なダイヤモンドの煌めきに、心を魅了されない女性はいないでしょう。
頂点を極めた贅沢でゴージャスな、まさに伝説のダイヤモンドジュエリー。
このような、比類ない美しさと輝きを持ち備えた、女性の胸元を飾る「奇跡のジュエリー」として生まれ変わりました。
思わず息をのむような、夢の世界を見ているようですが、1つの大きなダイヤモンド原石から、目もくらむほどゴージャスで、美しい逸品へと変貌を遂げたのです。
最後に
グラフには数多くの名品・逸品がある中で、私はなぜか「レソトプロミス」に、強烈に惹きつけられたので、このダイヤモンドが1つの原石から奇跡のジュエリーになるまでを、気まぐれですが取り上げさせてもらいました。
記事を書くにつれ、「鉱山から女性の胸元を飾るジュエリーになるまで」をコンセプトに掲げる、一流トップジュエラーのグラフには、敬意の念を抱かざるを得ませんでした。
「レソトプロミス」に関わる一連のストーリーに触れるだけで、ダイヤモンドの奥深い夢物語の世界に浸ることができました。
参考までに、同社の公式ホームページでは、ダイヤモンドストーリーと題して動画も公開されており、「レソトプロミス」のストーリーも見ることができます。(英語か中国語のみですが映像を眺めるだけでも楽しめます。)
インターネットのおかげで、一般人でもこんな特別で豪華なジュエリーを見せてもらうことができ、たっぷり目の保養をさせてもらいました。
一方で、世界で最も標高の高いこのダイヤモンド鉱山では、現地の労働者が、気温の変動が大きく、冬はマイナス25°Cまで下がる猛吹雪の中、極寒に耐えながら採掘作業をしているという事実にも目を向けなければなりません。
「2000年にはこの鉱山はなかったのです。
それが現在、1500人の従業員を雇用し、国家の法人税収入の70%、外貨収入の60%をダイヤモンド鉱山からの収入で占めています。」
このような採掘条件にも関わらず、レツェングの採掘産出量は5年間で倍増しました。
ほとんど無名だったレソト王国が、世界有数のダイヤモンド産地と認められるようになり、国家の誇りと約束が実現したといいます。
母なる大地からのダイヤモンドという贈り物で、この国がさらに豊かになることを祈るばかりです。
レソト王国について詳しくはこちら
グラフのブランドブックのご紹介
グラフの創業から、“キング・オブ・ダイヤモンド”と呼ばれるまでにの華麗なる歴史をまとめた、ブランドブックが発売されています。
「レソトプロミス」の詳細も含め、世界最大の118.08カラット、スクエアカット、ファンシーヴィヴィッドイエローダイヤモンド「ドゥレアサンライズ」などや、創業当時の貴重な広告から最新広告までが収録されています。
本の売上げは、貧困に苦しむ南アフリカの子供たちを支援するため、グラフが立ち上げた財団「The FACET Foundation」に全額寄付されるということです。
- 作者: Vivienne Becker,Maria Doulton,Nina Hald,Joanna Hardy,Suzy Menkes
- 出版社/メーカー: Rizzoli
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: ハードカバー
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